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SZASZI,ウィーンの高級紳士帽

マリアヒルファー通り。それはウィーンの人々に最も愛されているショッピング・パラダイス。
そこにあまり目立たず、少しホコリをかぶってはいるものの、魅力的なショーウィンドウがある。
それを見ると、建物を通り抜けたところにある古い石段を上った裏庭に、紳士帽を作る工房のあることが分かる。それを見ると、建物を通り抜けた裏庭にあ
る古い石段を上れば、紳士帽の工房があるということが分かる。

創業者の時代から使われているオリジナルの看板は、我々を帽子職人の世界へと導いてくれる。訪問者は驚きながらも、ノスタルジーの世界に紛れ込んだと気づくだろう。それはエレガントな紳士帽の世界であって、過去のものとされている卓越した完璧さを備えている。

この帽子工房では、洗練されたウィーン社交界のために高級帽子、特に、エレガントな紳士のためのシルクハットが長い間製作されてきた。マイスター・サーシ(Szaszi、サースィ)が戦死してすぐ、工房はツァレトカ(Caletka)家に売られた。マイスター・ツァレトカは後継者を長いこと探したが、誰も見つけることができなかった。しかし後になって時宜を得て、会社はふさわしき後継者としてマイスター・シャピラ(Shapira)を見つけることができた。シャピラは、エレガントな紳士帽の最後の職匠である。

2008年に150周年記念を祝った「サーシ帽子」社は、アトリエというよりむしろ博物館のような外観をもつ、ウィーンのビーダーマイアー様式の古い工房である。マイスター・シャピラはそこで高級紳士帽を製作しながら、オーストリア=ハンガリー二重帝国時代の最高水準の伝統を堅持している。

「サーシ」の誂え帽はすべて、幾多の国々から取り寄せられた最高の素材で作られている逸品である。

帽子職人シャピラは、外観からするとまだ一定の形をもたない帽体から、全く独特な、すばらしいモデルの帽子を入念な手仕事で作り上げている。誂え帽や誂え靴を重視するエレガントな紳士なら、「サーシ帽」があれば衣装を完璧にできると考えるだろう。

高級な紳士帽のモデルは、昔から変わらない手仕事で手間暇かけて、高級な原料から段階的に生まれてくる。すべての帽子が一品物で、それを被る紳士のために特別に仕上げられている。被り手の寸法はコンフォルマテュール(conformateur)を使って注意深く計測され、デザインは被り手の要望と趣味、顔の形、体つきによって調整を加えられる。高級な紳士服の評価を適度に高めるのは、最終的には帽子の贅沢さであり、エレガントな紳士服を引き立たせるために被せられるのが帽子という冠である。

ここでは顧客はまだ王様として扱われている。彼らは古典的な紳士帽の中から新しいモデルや古いモデル、古代調のものや奇矯なモデルを選ぶことができる。多忙な人でもマイスター・シャピラのところに来ると、完全に時間を忘れてしまう。彼らはここで失われたと思われている安らぎを見つけるだろう。数妙な雰囲気の中で、知的な、さらには繰り返し掘り下げられていく会話を交わすだろう。

製作されているのは、三角帽、ウィーンにあるスペイン乗馬学校に1884年以来納入されているニ角帽(ビコーン)、シルクハットなどである。つまり、買手の要求に制限は全く設けられていない。

紳士帽のモデル自体をとっても、ここ以外では世界のどこにも見つけられないようなものが、「サーシ帽子」社では問題なく製作されている。顧客にとって、これは猜疑心を強く掻きたてるかもしれないし、喜ばしい驚きともなるだろう。

クオリティの高さを意識する紳士ならだれでも、自分のために誂えられたエレガントな帽子を重宝し、他所では見つけられない特製の帽子に価値を置き、そんな帽子職人の意匠に信頼を寄せるだろう。どんなモデルの帽子が、どの形の帽子が、どんな顧客の顔に、完全な輪郭を与えることができるのか、マイスター・シャピラは経験上これらを熟知している。それは、被り手がその帽子と一緒にこの世に生まれた、という印象につながるはずである。
 

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